ほー原人のブログ

原人からヒトへと進化するための考察。法律関係がメインとなると思います。

今話題のテロ等準備罪(共謀罪)法案についての私見

この法案に対するぼくの基本スタンスを簡単に説明しておく。

1 政府はテロ対策の必要性を口実に国際組織犯罪防止条約TOC条約)締結のために必要と主張する広範な共謀罪を創設しようとしている。仮に政府の主張とおりTOC条約締結のために共謀罪が必要だとしても、テロ対策は無関係なので、この2つは分けて法案を作り直すべきである。無関係な2つの目的をつなぐために規定があいまいで対象犯罪が過度に広範になってしまっているからである。
 なお、日本はテロ防止関連諸条約13個は批准済みである。

2 法の適用対象となる「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」(改正法案6条の2)について、暴力団対策法における指定暴力団のように、事前に行政処分によって指定する制度にするべきである。これによって指定に不服がある場合、事前に行政不服審査行政訴訟によって争うことが可能となる。組織的犯罪とは無関係な団体が不意打ちで捜査、処罰される危険を回避できる。その結果、政府の恣意的な運用に対するある程度の歯止めとなる。

3 広範な準備罪の創設対象とされた犯罪(刑法の用語で構成要件という)は277個とされる(改正法別表4)。これは未遂処罰が例外、さらにその例外中の例外として予備行為が処罰される現行の刑法体系の原則と例外を入れ替えるものである。不必要に広範な処罰は捜査当局による恣意的な運用にしかつながらず不適切である。包括的に対象に含めるのではなく、どうしても必要な犯罪に対してのみ個別に立法するやり方を選択すべきである(この稿では触れないが、私見では、TOC条約の締結に共謀罪または参加罪の少なくとも一方が必要という政府当局の主張は、外務省の誤訳に基づく誤った議論であるという喜田村弁護士ら日弁連の説を採用する)。

4 以上の絞り込みを入れない場合、今回のテロ等準備罪が成立することによるリスクは、法案が成立することによって生じうるリスクを上回る。したがって成立させない方がよい法案ということになる。

以上

[参考URL]
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案
理由
http://www.moj.go.jp/content/001221007.pdf
新旧対照条文
http://www.moj.go.jp/content/001221008.pdf

テロ防止関連諸条約について
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/terro/kyoryoku_04.html

日弁連共謀罪に反対します
https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/complicity.html

共謀罪は不要(国連の立法ガイドより)
http://www.ac.auone-net.jp/~tigre/gwife2670/2666mokuji/kyoubouzai_UN51.htm